ミスターSの本棚

愚者の黄金  ジリアン・テッド  日本経済新聞出版社

(ミスターSです)

副題は「大暴走を生んだ金融技術」

2008年のリーマンショック世界経済は100年に一度の危機に突入した。
多くの経済学者エコノミストが論評し本を書いてきた。
私もこのブログで何回か書評を書いている。

『愚者の黄金』は一味違う。
著者は何を訴えたかったのか。

J・P・モルガンで銀行でかつて働いてきたひとにぎりの金融関係者の物語を
ひも解くことによって「この金融危機がいかにして起こったのか」の答えを見出している。
J・P・モルガンは一世紀に渡って銀行業界の大黒柱であった。

『世界経済の三賢人』のなかでも紹介したが、パフェットは言う。
デリバティブは「金融の大量破壊兵器」である。

パフェットのような賢人は、今回の危機が到来する前から警告はしていたが
たいていの人は「毒を飲まされ、踊らされた」

この大量破壊兵器を作ったのが、モルガンの若きエリートたちだ。
物語は、フロリダ美しいプライベートビーチにあるホテルから始まる。
有名人や資産家の隠れ家にふさわしい場所だ。
ここにニューヨークロンドン、東京からモルガンの若いエリートが結集した。

若き優秀な頭脳が新しい金融技術を生み出していく。
競合金融機関との競争、エリートたちの個人的や野望が渦巻く。
人間模様も生々しい。綿密な取材に感心させられる。

彼らが、規制当局の駆け引きや金融業界の荒波を乗り越えて、
新しい金融技術CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を開発し、
金融市場に普及したかが明らかにされている。

それは同時に金融市場の崩壊をもたらしたものであった。
モルガンがCDSを開発していなかったら、危機は起きなかったかどうかは分からない。
危機は起こるべくして起きたかもしれない。
ただ、今回の危機の主因、引き金であったことは確かである。

読み進むにつれて不思議に思うことがあった。

実体経済」の話がでてこない。
「消費者」や「もの作り」が経済の原点であるはずだ。
「実体経済」と全くかけ離れたところでの金融技術など破滅するに決まっている。

強欲が人間の判断を狂わし社会を破壊する。
本書は「人間の愚かさ」の教訓と見ることもできる。
まさにFOOL'S GOLD〈愚者の黄金)である。

愚者の黄金 [単行本]



スポンサーサイト

テーマ:今日の一冊 - ジャンル:本・雑誌

あなたに貸す金はない! 岩田昭男  アスキー新書

(ミスターSです)


副題は「国が生み出す新しい借金地獄」

改正貸金業法、改正割賦販売法という二つの法律施行された。
それぞれ施行日は、平成22年6月18日と平成21年12月1日である。
消費者金融サラ金)とクレジットカードを取り巻く環境が激変した。

何が変わったのか?
①「総量規制」が制度化された。
②「指定信用情報機関制度」が新たに導入された。

法改正の目的は何か?
社会問題化している多重債務者をこれ以上増やさないのが目的。

具体的にはどうなるのか?

①一個人の借入限度額は年収三分の一に決められる。
同時に、年収証明書の提出も必要となる場合もある。これが貸金の総量規制だ。
例えば、年収300万円の人の借入限度額は100万円までに制限される。

ただし、貸金業者(サラ金、クレジット会社等)からの借り入れに対する制限であるため
銀行借入や住宅ローン自動車ローンは対象外となる。
クレジットカード・ショッピングも異なる計算方法で総量規制が実施された。

②顧客情報が一本化される。
現在、業態ごとに五つの信用情報機関があるが一本化され、情報が共有化される。

何が問題か?

借り入れができない「借金難民」が1000万人に達すると予測されている。
年収200万円以下のワーキングプアといわれる低所得者が困窮することになる。
「借金難民」が「借金地獄」にはまってしまう。

銀行ローンは対象外ではあるといっても、もともと消費者金融に頼る人は
銀行ローンができない人たちである。
借り入れのあてのない人は「ヤミ金」に頼るようになる。
「ヤミ金」の跋扈が心配される。

これからどうなるのか?

「年収格差社会」がやってくるという。
年収1000万円以上の富裕層は、優遇され、400万円以下の人には
厳しい社会になっていく。

クレジットスコア」が日本にも導入されるようになる。
借入額、残債額、返済状況などから総合的に判断された、信用力の偏差値のことだ。
アメリカでは導入されている。

グレーゾーン金利も撤廃され貸金業者の横暴も制限されるようになった一方
消費者にとって新たな規制も始まっていることを知らなくてはいけない。
借金を取り巻く環境は激変している。

著者もいうように、「信用力がきびしく問われる社会」が到来している。

あなたに貸す金はない! 国が生み出す新しい「借金地獄」 (アスキー新書) [新書]



テーマ:今日の一冊 - ジャンル:本・雑誌

アニマルスピリット  アカロフ  シラー  東洋経済新報社

(ミスターSです)


経済活動は何によって動かされているのか?
アカロフはノーベル経済学賞を受賞し、シラーも著名な経済学者だ。
この両者が解き明かしているのが本書である。

古典派経済学アダムスミスは「見えざる手によるかのように」自律的に動いていたと主張する。
一方、ケインズは、ほとんどの経済活動が合理的な経済動機から生じていることは認めたが
多くの経済活動が『アニマルスピリット』によって動かされていることを指摘した。

経済の仕組みと、繁栄させる方法をを理解するには、人々の「感情」や「考え方」を律する
思考パターン「アニマルスピリット」に注目する必要がある。
人々が曖昧さ不確実性に対峙するときの独特の関係を理解することが大事だ。

経済的出来事も「心理的なアプローチ」なしでは理解できない。
マクロ経済学は「経済合理性」「効率性」にのみ注目していた。
人間は経済合理性で活動をするが、経済合理性以外の動機でも動く。

「アニマルスピリット」の五つの要素を挙げている。
①安心②公正③腐敗と背信④貨幣錯覚⑤物語
社会や政策に対する心的態度を示している。

なぜ経済は不況に陥るのか?

1930年代の大恐慌を「アニマルスピリット」で検証する。
雇用関係の「公平さの欠如」に対する反感、投資家ニューディール政策に抱いた「恐怖」
実体経済を動かしていた。

マクロ経済学の専門家の多くが「合理的期待」や「効率市場」で判断し
経済危機の根底にある最も重要な力学を忘れていると指摘している。

ノーベル賞を受賞するような大経済学者がこの様なことを知らなかったのかと
疑問に思う人も多いいと思う。

訳者も指摘しているように、もちろん経済学者は知ってはいるが長い間放置されていた。
それをキチンと理論に取り込む方法を誰も思いつかなかったのだ。

経済理論の「忘れ物」を改めて指摘したのが本書である。
経済こそ「人間臭い営み」であることをあらためて教えてくれる。

アニマルスピリット [単行本]



テーマ:今日の一冊 - ジャンル:本・雑誌

世界経済の三賢人  チャールズ・R.・モリス 日本経済新聞出版社

(ミスターSです)


2008年、『ウォールストリートジャーナル』は主力エコノミスト51人に対し、
経済予測を依頼し、順位付けを行った。
用いた指標は『2008年4四半期のGDP』と『2008年末の失業率』である。

結果はどうであったか。

二種類で合計102の予測に対し、101の予測が外れたのだ。
2008年9月、リーマンショックが発生し、世界は100年に一度といわれた経済危機に突入してた。

51人の経済予測の専門家は誰一人、この事態を予測していなかった。
順調な経済背長を信じて疑わなかった。

本書に登場する、ソロス、パフェット、ボルカーの三人は、早くから危機を予見していた。
ソロスは、1990年の後半から「超バブル」の膨張に警鐘を鳴らしていた。
自著『ソロスは警告する』では、2008年後半のクラッシュを予言し、的中させた。

パフェットは金融工学の暴走に強い懸念を抱いていた。
一方、ボルカーはグリーンスパンがFRBの議長を務めている間は沈黙していた。

ソロスもパフェットも投資で巨万の富を築いた。
投資家ソロスは、通貨危機の黒幕にもなった。

素人目には、高度な投資理論を駆使し、あるときは強欲な賭けをする人に見える。
だが、実像は違う。
三人はいずれも「美徳」を体現し、「信義」を備えた人たちであるという。
良識」を頼りにじっくり決断を下す。

市場は、放任しておけば「均衡」に向かうという理論がある。
FRB議長であったグリーンスパンも規制を嫌った。
在任中の手腕は高く評価され、その道の泰斗地位を手にした。
あのボブ・ウッドワードをして「巨匠」と言わしめた。
グリーンスパンに強い異論を抱いていた人物がいた。
前任のボルカーである。

ソロスも同じ考えだ。
市場は「均衡」どころか「不均衡」に向かうとの確信を持っていた。
いわゆる「再帰性」である。

パフェットも然りである。
デリバティブを「金融界大量破壊兵器」と酷評していた。

三者ともウォール街市場原理主義の行く末を見抜いていたのだ。

なぜ、この三人がとりわけ異彩を放つのか。

実際の金融市場と理論上の金融市場との関係を的確に表した比喩を用いて説明している。
古代ギリシャ哲学者プラトンが言った有名な比喩に「洞窟の比喩」がある。

「実体の影」を実体だと思い込んでいることだ。
人間の眼に映るものは真実ではなく影ばかりなのだ。
しかも、それに気づいていない。
仏教では無明という。
三賢人は影の向こうの実体を見れる人たちだ。

投資理論や経済理論からは、生まれない。
ましてや、ビジネススクールでは、教えるはずもない。

三賢人の哲学、世界観、市場観がよりどころになっている。
「デリバティブ」や「金融工学」は優秀な頭脳が生み出したに違いない。

しかし、投資をはじめ経済行為は所詮人間が行うものだ。
人間や人間社会に対する深い洞察、読みが投資理論を凌駕することを教えてくれる。

激動する世界で、「影」に踊らされずに「影の向こうの実体」を見抜く。
凡人には及ばない賢人たる理由である。

世界経済の三賢人 [単行本]



テーマ:今日の一冊 - ジャンル:本・雑誌

法医学現場の真相  押田茂實   祥伝社新書

(ミスターSです)


「足利幼女殺人事件」

冤罪事件である。
真犯人とされ、無期懲役服役していた菅家利和氏は再審の結果無罪になり釈放された。
なんと17年の長期にわたり刑務所で拘束されていたのだ。

DNAの再鑑定を行ったのが著者である。
事件当時、化学警察研究所がDNA鑑定をした。
事件のあった1990年、今から20年前はDNA鑑定の黎明期で精度は低いものだった。
しかし、裁判所は証拠採用し、無期懲役の判決を下した。

この事件は思わぬ方向へ展開する。

菅家さんは幼稚園バスの運転手をしていた。
ある日同僚が、弁護士が書いたDNA鑑定に関する論文を目にする。
早速、弁護士に連絡をし、この著者とつながりを持つようになった。

著者の再鑑定の結果、菅家さんとは別人であることが判明する。
最高裁へ検査報告書を提出したが、最高裁は黙殺し、再鑑定は行わなかった。
結果、無期懲役が確定した。

再審では、検察側と弁護側双方が「DNAの不一致」を認め無罪となった。
今でこそ、何兆分の一の確率で個人を特定できるが、20年前の技術では
冤罪を生む可能性も大きかった。


他にも「法医学」が解決した事件が紹介されている。
著者も言っているが、かなり杜撰な鑑定も多いのに驚く。

「殺人事件の真相に迫る」では、日本の現状に大変な危機感を募らせる。
いわゆる先進国では、異状死体の30%から40%を解剖している。

日本では、東京で14%、普通の地域では3%から5%しか解剖されていないという。
法医学の専門家のチェックが入らない前に火葬している。
多くの殺人事件が「闇」に消えていることは想像がつく。

日航機墜落事故や阪神和え味大震災のような大災害での教訓と法医学の役割にも言及している。

社会が複雑化し、巧妙な殺人事件や想定不可能な大事故も発生している。
法医学の重要性は増大している。
体制の構築が急がれている。

法医学現場の真相――今だから語れる「事件・事故」の裏側 (祥伝社新書200) (祥伝社新書 200) [新書]



テーマ:今日の一冊 - ジャンル:本・雑誌

偽善エコロジー  武田邦彦  幻灯舎新書

(ミスターSです)

私(ミスターS)は、最近「マイ箸」を持ち歩いている人に出会った。
ある業界の集まりでスピーチをした際に、持参した「マイ箸」を見せて自慢げに言った。
『私もエコに取り組んでいます』

「環境」「エコロジー」をいえば、いいことをしているように思われる。
社会が敏感になっている。
「反環境的」なことでもすれば、非難される。

『だが、よく考えてみよう。環境に良いとはどういうことか』

本書はこの視点で書かれている。
マスコミの誤った報道で、我々は『環境問題』を誤解している。

本書は、我々が「エコ」と思っていることを取り上げ、それぞれ検証している。

『マイ箸」の検証、その判定は
「森林を育て、自然を大切にするなら、国産の割り箸をどんどん使ってください」

(根拠)
・割り箸は「端材」から作られていた。
・木を育てるには”間引き”が必要である。
・日本で割り箸追放運動が起きた結果、日本で作ることができなくなり
中国から輸入するようになった。
中国は材木そのままを割り箸にしている。中国の森林破壊を招いている。

更に検証は続く

温暖化で世界は水浸しになる。よく言われていることだ。
『温暖化で海水面は上がりません。島国ツバルは温暖化で沈んでいるのではない』

北極海に浮かぶ巨大な氷河が溶けても海面水位は上昇しない。
アルキメデスの原理が証明しているが、自分でも簡単に実験できる。

一方、南極大陸の氷は温暖化で増える。
冷蔵庫の中にお湯を入れると、湯気で霜が増えるのと同じである。

問題はグリーンランドの氷だ。
ゴア副大統領著書不都合な真実』で海面が6メートル上昇するといっている。
これに対しイギリスで裁判を起こされている。誤った報道に対してだ。

6メートル上昇するには数千年かかるという。ゴアは近未来と言ったことが裁判になった。
島国ツバルは地盤沈下が原因である。

本書では約20の事例を検証している。

是非読んで欲しい。
マスコミも行政も教育も「環境」を言えば正義の味方になる。
大事なことは、真実を伝えることだ。

科学者や専門家の責任は大きい。
我々も、「環境」の通説を疑ってみることも必要である。

偽善エネルギー (幻冬舎新書) [新書]



テーマ:今日の一冊 - ジャンル:本・雑誌

百年続く企業の条件 帝国データバンク  朝日新書

(ミスターSです)

「企業の寿命30年説」はよく言われる。
帝国データバンクが調査したところによると、企業の平均寿命は40.5年。
30年説は80年代までの話だそうだ。

毎日多くの企業が創業される一方で、多くの企業が廃業や倒産に追い込まれている。
私たちが生まれるずっと前から存在している企業もたくさんある。
老舗企業」だ。

日本で100年以上の老舗企業は、二万社あるという。
帝国データバンクが「老舗企業」の実像に迫ったのが本書である。

100年どころか室町時代から数百年続いている企業もある。

・老舗企業として大事なことを一文字で表すと何かと質問した。
『信』が圧倒的な支持を集めて一位になった。
以下「眞」「継」「心」「真」と続く。

・社風を一文字で表すと
『和』が圧倒的に多かった。

・老舗の「強み」は何か。
『信用』と回答した企業が70%を超えた。

・老舗の「弱み」は何か。
保守性』と回答した企業は過半数を超えた。

経営者の回答は我々の予想と違わない。

・老舗が生き残るために必要なものは何か。
信頼と進取の気性」を重んじている経営者が多い。

「家訓」「社訓」の分析もおもしろい。
老舗企業の憲法である。
歴史の試練を経て培った「経営の要諦」である。

業種、業界によって違いはあるが、五つのキーワードにまとまるという。
・感謝・勤勉・工夫・倹約・貢献

激動する世の中で、100年以上継続し、発展するためには
社会の変化を読み、適応し、自らを変革させる力が必須である。

本書で言う「新しい老舗」を実現した企業だけが生き残っている。
本書には12社の老舗企業が紹介されている。
「新しい老舗」の持つ「しなやかな強さ」が伝わってくる。

興味を引く行がある。

危機に直面したときだ。
『いつも苦しいときになぜか誰かが手を差し伸べてくれた』
『商売を「運」で片付けてははいけないが「徳」があった。』
『その時々に、助けてくれる人が出現する』

戦争や災害で多くの老舗が倒産しているが、乗り越えられたのは運があったからだという。
不思議な力を実感しているのだ。

老舗の研究は「新しい発見」で一杯である。

百年続く企業の条件 老舗は変化を恐れない (朝日新書) [新書]



テーマ:今日の一冊 - ジャンル:本・雑誌


地球の名言


presented by 地球の名言

スポンサード リンク

                     

プロフィール

ミスターS

Author:ミスターS
このブログはミスターSと、その仲間で読んだ本の所感等を書いています。私ことミスターSはフォトリーディングという特技で、1年間に365冊以上の本を読むようにしてます。このブログを読んで、気になった本があったら、ぜひ読んでみてください。

カレンダー

07 | 2010/08 | 09
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

最新記事
カテゴリ
検索フォーム

アクセスカウンター

最新コメント
QRコード

QR

月別アーカイブ
天気予報


-天気予報コム- -FC2-

リンク
最新トラックバック
RSSリンクの表示