ミスターSの本棚

経済学的思考のすすめ   岩田規久男  筑摩選書

(ミスターSです)

シロウト経済学は花盛り。

書店には経済学の専門家ではないシロウト経済学者、にわか経済学者の書いた本で並んでいる。
なるほど現在日本の問題点を指摘し、経済の処方箋を展開している。

シロウトからみると「なるほどな」と思う指摘も多い。斬る姿は小気味いい。
しかし、そんな簡単なものだろうかとの疑問もわく。

著者の岩田氏は経済学の専門家である。
「シロウト経済学」の代表として辛坊治朗・辛坊正記『日本経済の真実-ある日この国は破産します』
(幻灯舎)を取り上げている。
経済学の専門家からみた間違いを指摘しているのが本書である。

辛坊治朗氏は日本テレビの解説委員長であり、ニュースキャスターとしてテレビの露出も多い。
「シロウト経済学者」が世論を誘導すると思うと恐ろしい。

著者の経済学的思考法は「演繹法」にある。
演繹法とは「AであればBである」と言う論理的推論である。
仮定が正しく推論が間違っていなければ結論は正しく導かれる。

それに対して「帰納法」がある。
帰納法は同じことが何回も起きることから結論を導くのであり、必ずしも真ではない。
つまり、数多い経済現象から結論を導くのだ。
「シロウト経済学」がよりどころにする思考法であるが、間違いの原因でもあるという。

「日本国の借金」について辛坊本の見解についても反論する。
日本の借金を、所得がないため。借金の返済のあてのない家計にたとえて議論している。

しかし、このたとえ話では、家計の借金は借金した家計が返済しなければならないが、
国の借金は借金した国が返済するのではなく国が国民から税金を取って返済すると言う点で、
家計の借金とは異なると指摘する。

もさらに、辛坊本はユニクロのような企業は日本経済にとって大きな問題だという。
ユニクロが海外で安く生産して日本で売りさばくことを「経済学的に」問題視している。
辛坊氏は経済の仕組みさえを理解していないことをさらしている。

国債累積は国債の暴落を招くかの問いに対し著者はいう。

日本の名目成長率が4%まで上昇すると、国債の名目金利も4%近くまで上昇すると考えられる。
これは国債価格が18%下落することを意味している。

5%の成長で23%も下落する。
この程度の下落は暴落とは言わない。

日本がデフレから脱却して主要国並の4~5%の名目成長率になれば日本が破綻することになってしまう。
むしろ事態はまったく別で、日本経済はようやく暗い闇から脱出できるレベルになる。

「シロウト経済学」は簡単明瞭だ。しかも説得力があるように見えて一般受けもする。
しかし、大きな誤りも内在している。
経済学的思考法の大切さを教えてくれる本である。


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経済学は人間を幸せにできるのか  斎藤貴男  平凡社

(ミスターSです)


著者が6人の経済学者インタビューをした。
「幸せ」の定義は人それぞれで漠然とした問いかけではある。
だが、ここでは「経済政策」が人、社会を「幸福」に導いているのだろうかという
切り口で経済学者に迫っている。

中谷巌

2008年9月のリーマンショック後の12月に『資本主義はなぜ自壊したのか』という
本を書いている。著者の「転向」は話題になりテレビにもよく露出した。

中谷氏は「小泉・竹中構造改革」のブレーンであった。
結果として、アメリカから押し付けられた「新自由主義」は人、社会の不幸をもたらした。

手段はどうであれ、自由競争の中で上手に稼ぐことが「資本主義の正義」であり
職や財産を失うのは自己責任であるという考え方は間違っていることに気づいたのだ。

グローバル資本主義市場原理は「悪魔のシステム」であるとまで言い切っている。
著者自身も言っているように「懺悔の書」である。

中谷氏は経済学の欠陥をこう指摘している。

人間は社会的な動物であることをまるっきり忘れている。
個人が消費をする「市場」と意思決定する「政府」だけの世界で、「市場」と「政府」の間に位置する
「社会」の存在を見失っている。

そこには家族がいて、会社や宗教団体もある。人と人が支えあっていいる「社会」がある。
経済学の指標には現れないことも多く真実が隠れている。

経済学は人間のややこしい部分を無視している。
ロジックで議論できることだけを相手にしている。
しかし、「ややこしい部分」こそが人間や社会の本質であることを忘れている。

アメリカ経済学が前提としているのは、
歴史や社会から分離され自分の幸福を必死に追い求める利己的な個人であるとも言っている。

経済学的なロジックの追求の結果、金融工学のような理論が生まれ、金融崩壊の一因になったとも言われている。

私は投資家ソロスの言葉を思い出した。
市場は放置すれば「均衡」には向かわない。人間の意志とはかけ離れたところに向かってしまうという理論。

「経済学」が「人間を幸せにできる」のは、血も涙もある人間に対する「深い洞察力」を備えたときであろう。
経済学は人間を幸せにできるのか




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お江と戦国武将の妻たち   大和田哲男  角川文庫

(ミスターSです)

NHKの大河ドラマ「お江」が始まった。
昨年の「龍馬伝」の男臭いドラマから一転して、きらびやかな女たちの世界が映し出される。

歴史の女性像として、我々にインプットされているのは江戸城の「大奥」である・
歴史ドラマの定番のようなもので、世間から隔離された男子禁制の場である。

しかし、そういう先入観で「お江」を観ると戦国武将の妻たちが理解できなくなる。
「戦国武将の妻と江戸の妻」は全く違うのである。

著者は言う。
『夫の立ち回り次第では家の存続さえ危うく、まさに夫と生死を共にする戦国時代の妻と
安定した徳川時代の妻は明らかに違う』
本書はこれを検証している。

大河ドラマの一回目で
信長の妹「お市」が浅井長政に嫁ぐ場面がある。

政略結婚という男と女情報戦が始まったのだ。
信長が浅井長政との同盟をたくらんで仕掛けた結婚である。
結局失敗に終わり「お市」は戻るが、このような話が日常なのが戦国の世であった。
同盟化でありネットワーク化である。

経営戦略に置き換えて考えると良く分かる。
事業統合し経営資源のシナジー効果を狙い、経営基盤を強化することだ。
競合他社に勝つための競争戦略である。

戦国武将の妻たちは「内助の功」を超えた働きをしていた。
戦場で表にたった妻たちも多い。

戦国時代を終わらせたのも女性である。
関が原の合戦後、次第に天下の権を握り始める徳川家康豊臣の天下を
維持しようとする淀殿とが衝突した際に調停をしたのが次女、お初(常高院)である。
姉と妹の殺し合いを回避し、講和交渉に導いたのである。

戦国武将の妻たちは、夫と同じく歴史を動かした。
彼女たちを軸にして歴史は展開したともいえる。
お江と戦国武将の妻たち (角川ソフィア文庫)


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なぜ被害者より加害者を助けるのか  後藤啓二  産経新聞出版

(ミスターSです)


副題は「理不尽な法制度を糺す」

残念なことに殺人事件をはじめ刑事事件は数知れず発生している。
重大事件になれば毎日メディアに露出され、我々は事件の顛末を知ることになる。

被害者の身元が報道され、捜査の結果犯人が捕まり、事件は解決される。
やがて犯人は裁判にかけられ、相応の罰を受ける。

一方、犯罪被害者が事件後どういう境遇に直面しているかは知る由もない。
犯罪被害者の実態に光を当てたのが本書である。
著者は弁護士である。

「犯罪被害者」と聞いても「被害者」になったことがない人にはピンと来ない。
誰でもが「被害者」になる可能性があることを前提に、想像力をたくましくして考えて欲しい。

もしあなたが次のような事件に巻き込まれたことを想定してみよう。

・あなたが大怪我をさせられた。
・あなたの子ども寝たきりにさせられた。
・あなたの子どもが殺された。
・あなたが殺された。

現実はどうか。
被害者やその家族は不誠実極まりない対応を受け
頼みの警察、検察、裁判所からは期待を裏切られる。

法廷では、加害者には国民の税金で弁護士がつき、その費用は76億円(H17年)にも上る。
自らの非を認めて反省するのはごく少数で、ほとんどは被害者を侮辱し、刑を軽くするため
あらゆる手段を使ってくる。

加害者は「人権」の名の下に保護され、被害者の人権は踏みにじられる。

なぜこのようなことが起こるのか。

わが国の法制度が加害者を厚く保護しているからであるという。

憲法、刑事訴訟法には加害者の権利規定が詳細に定められている。
日本の刑法は加害者には甘い。人を殺しても死刑にはならない。
ひどい場合7~8年で仮出所になる。

一方、被害者を護る法制度はあるのか。

被害者の訴えで、法は整備されつつある。
被害者が加害者に損害賠償を請求する場合には民事訴訟裁判しかなかったが
刑事裁判で「損害賠償命令」の申し立てを行えるようにもなった。

しかし、まだまだほど遠い。
「泣き寝入り」どころか追い討ちをかけて踏みにじれれる。

犯罪被害者やその遺族がどれだけ深い悲しみと絶望にさいなまれ生きてゆかねばならないか。
それに対し、国家のサポートがないとしたら大きな欠陥である。

犯罪被害者救済のための法律の整備が急がれている。

なぜ被害者より加害者を助けるのか [単行本(ソフトカバー)]



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「10年不況」脱却のシナリオ  斉藤精一郎  集英社新書

(ミスターSです)


著者は言う「経済学は死んだ]
「これまでの経済学」は政策立案の上で役に立たなくなっている。
人間の欲望を直視し、新しい価値観を持った経済学が求められているという。
「第二の不確実性の時代」へと突入している。


「10年不況」の根拠は何か。

アメリカ経済にある。
アメリカ経済が浮揚しなければ世界の景気の回復はない。

オバマ政権は「グリーン・ニューデール」と呼ばれる新経済政策を打ち出した。
10年を見越した政策である。
「グリーン関連産業」により景気が浮揚するには10年かかることを意味する。

日本のとべき政策は何か。

著者は持論を展開する。
「海外直接投資立国」へのパラダイム転換である。
日本は輸出依存型経済である。

しかし、対GDPに占める輸出の割合は16%ほどに過ぎない。
ではなぜ輸出が日本経済に影響するのか。
「輸出関連乗数」が大きいからである。
日本のピラミッド型の産業構造が根底にある。

円高になれば輸出産業は打撃を被る。
「内需拡大」の声も大きくなる。

輸出依存型経済の欠陥は二つある。
①為替変動リスク
②日本経済の空洞化が進展する。

一方、「円安」は何をもたらすのか。
輸出が増大し経済が活性かされるだろう。

しかし、資源を輸入に依存している日本には大変危険である。
輸入産品の価格が上昇するわけであるから、そのデメリットは計り知れない。

円高で苦しまないように「内需主導型経済」を目指そうという意見が必ず出てくる。
日本は既に世界でもまれな「高齢化社会」に突入している。
国内市場は減少の一途である。

人口減少社会にあってはよほどの工夫がなければ酷な話であるという。
管内閣が言うように「介護分野」で新規需要創出するにも
『雇用!雇用!』の掛け声だけではダメである。
構造的な変革をしなくてはいけない。

それでは、展望はあるのか。

「日本の製造業による海外への直接投資」である。
もちろん現在でも盛んに行われているがさらに促進させるものだ。

「国内空洞化」にはどのように対処するのか。
「製品の付加価値を高めるような業務」にシフトすることである。
これもよく言われていることだ。
自動車メーカー家電メーカーでは既に道を切り開いている。

日本は資源のない国である。
円高を生かした海外直接投資、資源調達等を戦略的に推進することによって
活力を回復できるのであろう。

「10年不況」脱却のシナリオ (集英社新書) [新書]



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「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?細野真宏 扶桑社

(ミスターSです)

副題は「世界一分かりやすい経済の本」

経済の難解な問題を分かりやすく解説している。
著者には『数学嫌いでも「数学的思考力」飛躍的に身につく本』というベストセラーがある。
「数学的思考力」の有効性を語っている。

年金問題の」の最大の焦点は「未納問題」であるといわれている。
これは「未納者が増えれば、今の年金制度破綻する」という論理になる。

はたしてそうだろうか。

年金には、国民年金厚生年金共済年金がある。
会社員が支払う厚生年金の保険料には、国民年金も含まれている。
公務員の共済年金も同様である。
給料天引きであるから未納は発生しない。

会社員や公務員の妻たちは「第3号被保険者」になり、国民年金の保険料を支払わなくても良い。
納付率が60%」というのは「10人に4人が支払っていない」わけではない。
これは「第1号被保険者」に関する話であって、誤解の原因がある。

数字で説明しよう。

公的年金加入者は7012万人(平成19年度)
自営業者や学生が加入する第1号被保険者数2035万人。
その内保険料納付者は1209万人。未納者は826万人であるが免除者等が518万人存在する。
実質的な未納者は308万人になる。

未納者308万人を公的年金加入者総計7012万人で割れば4.4%になる。
これが未納者の実体数字である。
未納者5%未満では「年金破綻」の原因にはならない。

・なぜ人は、「宝くじの行列」に並んでしまうのか?
・なぜアメリカ住宅ローン問題で私たちの給料まで下がるのか?
など「数学的思考力」で説明している。

数学というと難解の数式を思い浮かべ、苦手と思い込んでいる人も多い。
義務教育での数学トラウマである。

しかし、事象の本質をとらえる「論理的思考力」のツールだと考えればいい。

「数学的思考力」の楽しさを教えてくれる本である。

「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?~世界一わかりやすい経済の本~



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終わらない対中援助    古森義久 青木i直人  PHP研究所

(ミスターSです)


北京首都国際空港は日本のODA(政府開発援助)300億円が投入されて建設された。
北京の地下鉄には200億円もの日本のお金が使われた。
中国人誰も知らない。知っているのは一部の政府関係者だけだ。日本でも報道されていない。

中国へのODAは1979年に始まり、2008年に終了している。
正確に言うと、終了するのはODAの内9割を占める円借款のみで、無償援助と技術援助は
継続している。

規模は、円借款で約3兆円、公的対中援助で約3兆円、総計6兆円に上る。
「円借款」というと援助というニュアンスはないが、ほとんど無利子に近い融資である。
日本国民の税金であることを忘れてはならない。

日本のODAは特殊であるという。
「ODA大綱」が1992年に制定されたが「法律統治」がない。
政策に理念がないために、相手国の要請によって援助を行う「要請主義」が慣例になっている。

中国人はODAの実態を知らされていないが、知ったとしても感謝はしないという。
反日教育の結果「ODAは戦争賠償金」という刷り込みに成功しているからだ。

著者は疑問を投げかける。
30年にわたる対中援助は何であったか。
検証の総括的な報告は皆無である。

理念なき日本外交の典型がある。
中国と政治問題になるのを恐れて報道しないマスコミの責任も大きい。


終わらない対中援助 [単行本]



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アニマルスピリット  アカロフ  シラー  東洋経済新報社

(ミスターSです)


経済活動は何によって動かされているのか?
アカロフはノーベル経済学賞を受賞し、シラーも著名な経済学者だ。
この両者が解き明かしているのが本書である。

古典派経済学アダムスミスは「見えざる手によるかのように」自律的に動いていたと主張する。
一方、ケインズは、ほとんどの経済活動が合理的な経済動機から生じていることは認めたが
多くの経済活動が『アニマルスピリット』によって動かされていることを指摘した。

経済の仕組みと、繁栄させる方法をを理解するには、人々の「感情」や「考え方」を律する
思考パターン「アニマルスピリット」に注目する必要がある。
人々が曖昧さ不確実性に対峙するときの独特の関係を理解することが大事だ。

経済的出来事も「心理的なアプローチ」なしでは理解できない。
マクロ経済学は「経済合理性」「効率性」にのみ注目していた。
人間は経済合理性で活動をするが、経済合理性以外の動機でも動く。

「アニマルスピリット」の五つの要素を挙げている。
①安心②公正③腐敗と背信④貨幣錯覚⑤物語
社会や政策に対する心的態度を示している。

なぜ経済は不況に陥るのか?

1930年代の大恐慌を「アニマルスピリット」で検証する。
雇用関係の「公平さの欠如」に対する反感、投資家ニューディール政策に抱いた「恐怖」
実体経済を動かしていた。

マクロ経済学の専門家の多くが「合理的期待」や「効率市場」で判断し
経済危機の根底にある最も重要な力学を忘れていると指摘している。

ノーベル賞を受賞するような大経済学者がこの様なことを知らなかったのかと
疑問に思う人も多いいと思う。

訳者も指摘しているように、もちろん経済学者は知ってはいるが長い間放置されていた。
それをキチンと理論に取り込む方法を誰も思いつかなかったのだ。

経済理論の「忘れ物」を改めて指摘したのが本書である。
経済こそ「人間臭い営み」であることをあらためて教えてくれる。

アニマルスピリット [単行本]



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世界経済の三賢人  チャールズ・R.・モリス 日本経済新聞出版社

(ミスターSです)


2008年、『ウォールストリートジャーナル』は主力エコノミスト51人に対し、
経済予測を依頼し、順位付けを行った。
用いた指標は『2008年4四半期のGDP』と『2008年末の失業率』である。

結果はどうであったか。

二種類で合計102の予測に対し、101の予測が外れたのだ。
2008年9月、リーマンショックが発生し、世界は100年に一度といわれた経済危機に突入してた。

51人の経済予測の専門家は誰一人、この事態を予測していなかった。
順調な経済背長を信じて疑わなかった。

本書に登場する、ソロス、パフェット、ボルカーの三人は、早くから危機を予見していた。
ソロスは、1990年の後半から「超バブル」の膨張に警鐘を鳴らしていた。
自著『ソロスは警告する』では、2008年後半のクラッシュを予言し、的中させた。

パフェットは金融工学の暴走に強い懸念を抱いていた。
一方、ボルカーはグリーンスパンがFRBの議長を務めている間は沈黙していた。

ソロスもパフェットも投資で巨万の富を築いた。
投資家ソロスは、通貨危機の黒幕にもなった。

素人目には、高度な投資理論を駆使し、あるときは強欲な賭けをする人に見える。
だが、実像は違う。
三人はいずれも「美徳」を体現し、「信義」を備えた人たちであるという。
良識」を頼りにじっくり決断を下す。

市場は、放任しておけば「均衡」に向かうという理論がある。
FRB議長であったグリーンスパンも規制を嫌った。
在任中の手腕は高く評価され、その道の泰斗地位を手にした。
あのボブ・ウッドワードをして「巨匠」と言わしめた。
グリーンスパンに強い異論を抱いていた人物がいた。
前任のボルカーである。

ソロスも同じ考えだ。
市場は「均衡」どころか「不均衡」に向かうとの確信を持っていた。
いわゆる「再帰性」である。

パフェットも然りである。
デリバティブを「金融界大量破壊兵器」と酷評していた。

三者ともウォール街市場原理主義の行く末を見抜いていたのだ。

なぜ、この三人がとりわけ異彩を放つのか。

実際の金融市場と理論上の金融市場との関係を的確に表した比喩を用いて説明している。
古代ギリシャ哲学者プラトンが言った有名な比喩に「洞窟の比喩」がある。

「実体の影」を実体だと思い込んでいることだ。
人間の眼に映るものは真実ではなく影ばかりなのだ。
しかも、それに気づいていない。
仏教では無明という。
三賢人は影の向こうの実体を見れる人たちだ。

投資理論や経済理論からは、生まれない。
ましてや、ビジネススクールでは、教えるはずもない。

三賢人の哲学、世界観、市場観がよりどころになっている。
「デリバティブ」や「金融工学」は優秀な頭脳が生み出したに違いない。

しかし、投資をはじめ経済行為は所詮人間が行うものだ。
人間や人間社会に対する深い洞察、読みが投資理論を凌駕することを教えてくれる。

激動する世界で、「影」に踊らされずに「影の向こうの実体」を見抜く。
凡人には及ばない賢人たる理由である。

世界経済の三賢人 [単行本]



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亡国予算  北沢栄   実業之日本社

(ミスターSです)


日本の国家予算はいくら?
街で100人に聞いてみたらなんて答えるだろうか。
「確か90兆円くらいかな」と答える人も多いいだろう。

鳩山内閣で成立した国家予算は92兆円超である。
但しこれは「一般会計」だけの数字であるから不正解である。

国家予算には「特別会計」という伏魔殿が存在している。
何と、一般会計の5倍の資金規模である。
一般会計と特別会計は行き来して重複計上されているのが実態で
重複計上分を除くと5倍に達する。

副題に「闇に消えた特別会計」とあるように、実態が報道されることもなかった。
国民には知らされていなかったとも言える。

本書は日本特有の「特別会計」の巨大な資金量や特別な仕組み資金の流れの
異様な実態を明らかにし、会計上、事業上の問題点を明らかにしている。

・特別会計とは何か。

国が行う道路や空港の整備、年金管理、財政投融資のような特定の事業の資金を運用するために、
外交、防衛、教育などの一般会計から区分して経理している会計のことだ。

・何が問題なのか。

特別会計は、まさに「官僚内閣制」のバックボーンになっている。
一般会計の5倍の資金を官僚が操っている。「利権」と「莫大なムダ」の温床になっている。
道路特定財源など典型だ。

複雑で、チェックも甘く、政治家の利権も絡む。官僚のやりたい放題になっている。

2003年、当時の財務大臣塩爺こと塩川正十郎が発言した。
『母屋〈一般会計)でおかゆを食べ、離れ(特別会計)でスキヤキを食っておる』
このころから特別会計が身近になってきたという。

・一般会計との関係は何か。

毎年、一般会計の6割が特別会計に繰り入れられている。
50兆円以上の規模だ。
国債償還、地方交付税交付金、社会保険給付金である。

埋蔵金とは何か。

特別会計剰余金のことだ。
50兆円あるといわれている。
更に、毎年「不用金」といわれるものが10兆円発生するという。
埋蔵金で経済危機に対応する新基金の創設を提案している。


本書を読み進むにつれ「特別会計」の存在が「国のあり方」を左右していると思えてくる。
行財政改革のマスターキーである。
世界の主要国の会計は一本である。

著者は提言する。
国民の目が届く「陸上競技方式」が究極の会計制度だ。
つまり、この競技場にすべての「特別会計」を移し、トラックで競技(経理)をさせるイメージである。

7月23日 民主党は「事業仕分け」第三弾を10月に行うと発表した。
目的は「特別会計仕分け」である。特別会計にメスをいれ、公開されるのは初めてだ。
官僚たちとの攻防が見ものである。

「特別会計」について、これほど詳細に書かれた本はないと思う。
「この国の仕組み」や「官僚内閣制」の実態を知るためにも是非読んで欲しい。

亡国予算―闇に消えた「特別会計」 [単行本]



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このブログはミスターSと、その仲間で読んだ本の所感等を書いています。私ことミスターSはフォトリーディングという特技で、1年間に365冊以上の本を読むようにしてます。このブログを読んで、気になった本があったら、ぜひ読んでみてください。

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